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新宿で働くIT系プロダクトマネージャーが語る会社員の働き方・生き方

プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントを兼務して失敗した話

以前プロダクトマネージャーとして担当した製品で、プロジェクトマネージャーを兼務した製品がありまして。

プロジェクトマネージャーと言っても、製品開発そのもののプロジェクトマネジメントは別の担当に任せていたので、私が担当していたのはどちらかというと GTM(Go To Market)関連のプロジェクトマネジメントの部分。具体的には、物流の仕組みやスケジュールの調整、マーケティングメッセージの開発と販促ツール制作などの方。プロダクトとプロジェクト、双方を兼務する人間として、当然上層部への進捗の報告を定期的に行なっていた。

しかしある時、困ったことが起こってしまったのである。

自分の担当してきた製品、プロトタイピングを進めたところ、確かにニーズを満たせるものだったのだが、どうもユーザの期待価格と合わない!

価格は、ユーザ自身が感じる価値を定量的に具現化したものです。例えば、道端に落ちている綺麗な石ころ。私はそれになんの価値も感じないけど、もしかしたら庭づくりが趣味の人にとってはその石はひとつに100円出しても欲しいものかもしれない。つまり価格とは、ある特定のニーズを持った人の満足度に応じて決まるもので。

そうなると、この時プロダクトマネージャーとしてやるべきことは「価格を下げられるコストダウンやビジネスモデルの転換などの工夫をする」あるいは、「期待価格に見合う機能を付加する」などの対応が必要になるはず。それは、プロダクトマネージャーは「ニーズに合う製品を定義する」のが仕事の目的だからだ。ニーズを捉え、普及するものでなければ意味がない。

しかしながら、プロジェクトマネージャーを兼務していると目的が変わってくる。プロジェクトマネージャーになると「決められた期日で仕事を完了させる」というのが仕事の目的になるのだ。そのために予算も管理し、スケジュールを管理し、リソースを管理する。

すなわち、プロダクトマネージャーの「もっと考えられた製品を作るべきだ」というモチベーションと、プロジェクトマネージャーの「予定通り終わらさなければならない」というモチベーションがぶつかってしまうものだ。本来、ビジネス的にクリティカルなのは前者である。なぜなら後者を優先してしまうと、無価値なものを世の中に送り出してしまうからだ。こういうときは一旦仕切り直さなければいけない。

しかしその時の判断としては、その状態でリリースをした。

それはソフトウェア会社だというメンタルにも理由はあった。いったんリリースをしても、製品はその後改善を繰り返すことができるのである。メディアの注目を得るためにも、まずはリリースをしてしまうという判断もあるだろう。実際に直面するとすごく難しい判断ではある。

確かにリリースした後、徐々に製品の改善を繰り返し、ユーザにだんだんと買ってもらえるようになったが、思うように売れていかないこともあり、当初この製品にモチベーションの高かった営業チームやマーケティングチームなどが、この製品の可能性にやや懐疑的になってしまった。そうなってしまうと、なかなか会社を再起動するのは難しい。

「後からでもなんとか改善できる」というのは確かにソフトウェアの特長。

だけど、それをやるには一定のリスクを受け入れる覚悟と準備が必要ということなのです。

最初は普及しない可能性があるのであれば、それなりの販売目標設定としたりなど、前提に共通認識を持った上で進めていかないと、なかなか会社全体の期待とズレてしまう。

プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーは兼務せず、それぞれが同一の力を持ち、最終的にリリースをジャッジする仕組みが必要。会社によっては、それが叶わない事情もあるだろうが、その際は上述のリスクをしっかりと把握して物事を進めなければならないと思うのであります。