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新宿で働くIT系プロダクトマネージャーが語る会社員の働き方・生き方

「買いたいか」調査ほどの無駄はない

何か製品を企画するときに、市場調査のデータを求められることが往往にしてあります。

 

ある30代向けの製品のコンセプトを描き、そのコンセプトに対して調査で30代の人がどれくらい「買いたい」と言うかどうかを調べ、80%の人が「買いたい」と言っているからこの製品はいけます、、というものです。

 

このようなやり方は結構お金と時間がかかるのですが、実は実際に市場のウケを計測するのには効果的ではないことが経験上多いと思っています。

 

理由は簡単です。「買いたい」という気持ちの強さが測れないからです。「ないよりはあった方がいい」程度の人も「買いたい」方向に振れます。これをできるだけ回避するための調査のやり方として「すごく買いたい」、「買いたい」、「どちらかといえば買いたい」というような分類で見ていくこともありますが、だいたいどれも現実よりも高く出ます。

アンケート調査は一瞬の判断による回答なので、少しでも「欲しいな」と思ったら「買いたい」方向の回答をすると思いますが、実際に買うかどうかは別です。「欲しいけど実際には買わない」理由はたくさんあります。

例えば「欲しいけど、デザインや色が微妙」、「買いたいけど、今他に欲しいものがあるから実際そこまででもない」、「買いたいけど、置き場所がないな」などなど。

 

とても自然なことだと思いませんか?

誰でも「買いたいけど買っていないもの」はたくさんあるはずです。

いくら「買いたい」と思っていても、「買わない」という選択をされているうちはその商品は負けているわけです。

 

そのような調査よりも、実際の人の声を集める方が大事です。

 

・まず、様々な人から話を聞いて、特定の人の課題の仮説を持つ

・「同様の課題を感じている人がどれくらいいそうか」は調べても良い

・その課題を解決する製品・サービスのコンセプトと価格イメージを決める

・課題を感じている人に対面・あるいは電話などで直接お話をうかがい、なぜそういった課題を感じているのか、解決策としてどのようなことを考えたか、コンセプトのアイデアに対してどう思うか、を訪ねる。(プロトタイプがあるとベスト)

・そのフィードバックをもとにコンセプトをブラッシュアップする

・ターゲットとなる世代などの人を無作為に10名ほど集めてきて、再度、対面や電話でお話をうかがう。この際は多少なり動くものが見せられるとベター。

 

このような流れで進めていくと、実際のお客様像もクリアにイメージできるようになり、自分のアイデアにも自信が湧いてきます。

 

最も大事なのは「課題は何か」と「その深刻度」です。さらに、「同じ課題に対して深刻に思っている人がたくさんいればなおよし」ということだと思います。「買いたいかどうか」ではなく、課題に対してどう思っているかを掘るのが最も大事です。

 

その上で、それを解決できるソリューションがうまく組み上げられるか、良さを伝えられるかはまた別の課題です。ここにも落とし穴があり、ここで死んでしまっている製品も世の中には無数にあるのではないかと思っています。ただ、繰り返しですが、そこで戦う以前の話として、しっかりと課題と深刻度を捉えることが大事です。

 

「買いたい」調査が役に立つとすると、社内調整のエビデンスとして意思決定者にうまく納得してもらうシーンですかね。ただ、これはあくまでそのためのものであって、その調査結果を見ていると、自分もいける気がしてきてしまうのですが、決してそれが真実だと錯覚してはいけません。進めたい気持ちやそのためのプロセスと、計測すべきポイントは分けて考えましょう。