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新宿で働くIT系プロダクトマネージャーが語る会社員の働き方・生き方

やりたくもないことに全力だった日々

プロダクトマネージャーという仕事を始めてから、本当にたくさんの失敗と悩みを抱えてきました。

なかなかうまくいかない、お客さんに刺さった機能や製品を提案できない…。プロダクトマネージャーにとって自分の担当している製品が普及しない時ほど残念なことはありません。

 

長い間悩み続けていたのですが、その「失敗と悩み」の主な原因は「自分がやりたいこと」や「会社として本来やるべきこと」と離れてしまったことによるものだとある日に気付いたのです。

 

私はプロダクトマネージャーという仕事をする以前は営業職をやっていまして。

販売パートナーさまを担当し、売り上げを達成していくという仕事です。5年ほどやっていましたが、毎年目標達成をしていました。

営業の仕事はいたってシンプルでした。「担当している販売パートナーさまの叶えたいことを聞き、それに応えていく」というものが基本でした。もちろん販売パートナーさまが言っていることをそのまま聞くのではなく、かなえたいことを聞き出し、考えられる成功要因に対して議論を重ねてアクションにしていくことが重要です。それができれば上司との合意は決して否定されることはありませんので、周囲が協力してくれる環境も作っていくことができました。

それで成功体験を得られると自信もつき、またチャレンジをする…この頃は「自分のやりたいこと、会社としてもこうやるべき」ということを比較的リズムよくやれていたと思います。

 

一方で、プロダクトマネージャーとなると少し話が違ってきます。

営業はいち営業ですので、何十名、何百名もいる中の一人です。プロダクトは、そういった営業が取り扱う商材のひとつであります。

商社ではなく、ソフトメーカーとして新たに何かを作っていく場合、どの事業領域のどういった製品カテゴリに投資をするかというのは会社の生死を分けます。なぜなら1つの製品を作るのに、多くの人がかかわり、莫大なコストがかかるためです。ひとつのアプリを作るのにも、少なくともエンジニア、デザイナー、マーケティングは必要です。

しかもアプリなどだと定期的に更新が必要です。ずっと使ってもらうためという側面だけでなく、ガイドラインに沿ったセキュリティ対応など強制的に対応をする必要があるものもあります。会社としてのブランド価値を下げないためにも、ダメだったらすぐやめる、、ということは通常とるべきではありません。ある程度人的コストをかけ続ける必要があるのです。

 

したがって、製品の方向性を決めていくには多くの経営判断が入ります。ここが営業職と大きく違うところです。

私がつとめる企業では経営層は50代〜60代の方が多いです。様々な経験をされていて、過去にたくさんの失敗も重ねてきた方々だろうと思います。こうした方々から、製品の実績に対して色んな「批判」を受けることもあります。

ですが、本来はそれをアドバイスやひとつの指摘ととらえるべきだったと思っています。「批判」と捉えた私は、経営層の方々に気分良く支援をしてもらうための情報集めや、エビデンス作りなどに時間を使ってしまい、いつしか、「みんなが気持ちよく合意できること」をやるようになってしまっていました。

 

例えば「そのようなプロモーションの仕方をしたら、コストに対しての収益があがらないだろう」と言われたら「では、より効果が見込めるものを再考してきます」といったもの、「こんな機能があったらお客さんにうけるんじゃないか」と言われたら「確かにそうかもしれないですね、そういう声も過去にありました」といって少ないユーザの声をあたかもたくさんあったかのようにして応えてしまうなど。

 

本来は、お客様にとって本当に価値のあるものを定義し、うまく流通していくための仕掛け作りにこそフォーカスすべきであり、それが「私のやりたいこと」であり、「会社として本来やるべきこと」であります。

加えて、将来の展望をきちんと描いて、そこに向かうために今何をするべきかという視点が必要で、その場その場で点で議論をしてしまうと、その場の議論にしかならず、「結局何をしたかったんだっけ?」と離れてしまうことになります。

 

さらに、大事なことは「市場が将来どうなっていくから製品はこうなっていくべき」という観点です。「ユーザは現時点で何を期待しているが、将来こういった期待が考えられるからこうなっているべき」という洞察、それに応じて「販売パートナーがユーザの期待に答えようと変わってくるから製品は彼らが売りやすいような形になっていなければならない」といったような想像です。

 

このあたりを念頭において、経営層とも適切にコミュニケーションを取れる必要があります。適切に、、とはマイルドな書き方ですが、「だからこうするべきだ」と強く押し切るくらいの気持ちでいかないとプロダクトは運転できません。経営者のやりたい方向に運転をさせられてしまいます。

 

プロダクトマネージャーは、周囲とのコミュニケーションの仕方を誤ると「レールを敷いてもらってそこを行く」形になってしまいます。「自らレールを敷く方向すら決めて、敷きながら進んでいく」方が絶対に楽しいです。

 

色んな人に色んなことを言われる仕事ですが、気持ちを強く持って頑張れればと!