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新宿で働くIT系プロダクトマネージャーが語る会社員の働き方・生き方

マーケティングは答えのない議論の繰り返し

マーケティングプロダクトマネジメントをやっていると日々答えのない議論の繰り返しです。

かつて、私も新卒で入社した直後は5年ほど営業をやっていました。その後、縁があってマーケティングの世界に移り、製品を担当するようになったわけですが、今でも感じるのが「議論の質が違う」ということ。

「議論の質」とはどっちが良質、、という意味ではありません。どちらの職種も重要な議論をしているのは間違いないです。ここで言いたいのは中身の違いによる質の差です。

例えば営業チームにいたときは、とにかく「目の前の売り上げを稼ぐ」ということが絶対的正義でした。それを達成すれば高額な報酬がもらえます。極端な話を言えば、来年、再来年のことは見据える必要がなかったのです。とにかく来年のことは来年考え、今目の前の数字をあげていくことに集中、そのために今できること、工夫は何か。これこそが焦点でした。これはこれで大事な議論です。そもそも議論という場が少なく、自分の担当範囲に対して、自分で考え、案を出し、時には上司に相談をしながらやってみて成果を見るというものでしたね。

一方で、マーケティングに移ってからというもの、①答えのない議論の繰り返しで、かつ、②本当にいろんな関係者との議論が必要です。

先に②の方ですが、製品ひとつ世の中に送り出すためには、その仕組みを支える運営管理のチームとの足並みを揃えることがまず大前提として必要ですし、営業チームに販売してもらうために営業マネージャーたちとの合意や、リソースのアサインをしてもらう必要があります。製品を作っていくのだって、開発チームとの合意が必要ですし、実際に世の中に送り出す前には、「さぁ、これでいきますよ!」という承認会議という儀式を通さなければなりません。

そして最も難易度が高いのは①です。営業チームにいた頃は「目の前の売り上げを稼ぐ」ということに終始していたのに対し、マーケティングに移ると以下のような議論が起こります。ひとつ、ある新製品に対し、値付けをする議論のシーンを例にとってみましょう。

案1)調査の結果、お客様の需要価格が5,000円だから、5,000円にしましょう。

案2)製品からの利益率は20%とっておくべきだから、6,500円にしておくべきではないだろうか。

案1)調査の結果、この製品を試用した方の70%が「また使いたい」と言っていることから、リピート購買が期待されます。当初の利益率は低くとも、リピート購買は販促費が伴いにくいため、この価格でも3年間でひとりあたり利益率25%が目指せます。

案3)3年でそうなるのであれば、そこまで高い利益率は必要ない。それであれば、4,000円にしてはどうだ。3年で20%になってくるのではないか。

案4)なぜ3年必要なんだ。2年で十分確保できる値付けが良いのでは。そうすると、、4,500円くらいの計算になるのでは?

これ、どれも正解です。考え方の違いですから。この時、企業の判断軸がしっかりしていれば決定が容易です。

例えば「3年以内に安定的に20%以上の利益率が目指せること」など。そうすれば、案1で最初から決まりです。この議論の時間が無駄です。よりスピーディに意思決定がなされます。

一方で、上記は、わかりやすい例ですが、ひとつひとつの論点に関して、このように判断軸がガイドライン化されていることはなかなかないです。したがって、論点は違えど、上記のような議論を日々繰り返すこととなります。

担当者としては、想定されるすべての論点をあらかじめ洗い出し、すべてに対して解をもっておくことが議論を進める近道になります。「ああいう考え方もあれば、こういう考え方もある」を前提に、ひとつの最適解と思われるものを持つ必要があります。このあたりが「質の違い」であり、醍醐味であるところ。

担当者は日々悩まされるところかと思いますが、「そういうもんだ」と思ってやっていくのがストレスを溜めないコツですね。